潮かをる北の浜辺の砂山の
かの浜薔薇よ
今年も咲けるや 《石川啄木のうた》
春浅き大森浜(函館)を訪ね
いにしえの歌人に思いを馳せ
過ぎにし青春の日々を懐かしんできた
北の浜辺はまだ冷たく
海鳥だけが騒いでいた
潮かをる砂山は無く
浜薔薇も見つけられなかった
赤貧にあえぎながらも歌うことを続けた歌人
いや、歌うことがすべてだったのだろう
過去と未来とのはざまで私たちは生きている。
啄木のように歌うことは出来ないが
逞しく今を生きている
厳冬の季節を過ぎた
やわらかな春の気配を感じながら
啄木の海を後にして来た
佐藤 美代子